汽車と数学と物語
解説
2008.04.21
汽車がレールの上を走るおもちゃが、汽車セット。
でもその主役は、汽車ではなくレールだ。たしかに汽車がないと画竜点睛を欠くが、土台となる<レールの敷設>がおもしろい。
まずこの玩具ではふつう、レールでループを作る(汽車が永遠に走れるように)。でも漫然とパーツを継いでも、レールの端と端はつながらない。ループを作るには直線のパーツに曲線のパーツを混ぜるしかないが、<円と半径は有理数と無理数(超越数)>の関係にあるから、直線パーツで曲線パーツの<距離>を補えないのだ。曲線には曲線で対応するしかなく、レールの各区画が<点対称/面対称>になるよう、気をくばりつつ設置しないといけない(木製レールの場合は、部品の接続部にあそびがあるので、すこしのズレはそのあそびが吸収する。だから対称のルールに気を遣わなくても、それなりにつながることも多いからややこしい)……といった幾何の問題がある。
そして汽車セットのもうひとつの醍醐味は、レールのまわりに町や山、人や動物、クルマなどを配置し、ひとつの風景(情景)を創りだすこと。そのために使える素材は、(鉄道模型のようにスケールにこだわる必要がないから)積木から画用紙に描いた落書きまではば広い。
そのようにして作った情景をシーナリともいうが、まさにひとつの舞台を設計する作業といえる。それは物語の創出だ。